朝の函館と建物群
−北海道二都物語−
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<朝 食>

ひやりとする秋の朝。
7時ちょうどにベッドから抜け出し、あわただしくシャワーを浴び朝食の席に着いた。
朝市の名物・海鮮丼に心は動かされたが、付随しているホテルの洋食ビュッフェを無駄にしたくない気持ちが働き、たっぷりの朝食をいただいた。

<朝市のカニ>

函館朝市の賑わいはあいかわらずだが、ここも観光化してしまい、価格が上ってしまった。正しい値段がいくらなのか、判断ができないカニなどの高額食材は避け、安価な魚貝類を中心に選び、宅配便で送ることにした。
カニ売り場のアンちゃんは威勢がいい。「さあ、いらっしゃい!安いよ!安くしときますよ!」
先だって
TVに出ていたな、と思う大柄なお兄さんが元気いい大声で客を誘っていた。母親らしい女性が奥で金勘定をしていたが、その血色のよさから商売繁盛が読み取れた。
函館朝市はすでにブランド化している。
閑話休題。
タラバガニの真贋が話題になっている。
甲羅の下部に6つの突起があるものが「タラバ」で、4つのものは「アブラ」ガニ。まったく別のカニである。わたしの懇意にしている水産会社のカタログにも、最近は「アブラガニ」の表示が目立つようになった。味も価格も違うので要注意である。アブラのほうが安い。だまされないことである。
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<坂の町>
元町は坂の町である。
二十間坂というからメートル法で計算すると横幅36mの道路になるが、函館山から真ん中を下る坂は、まっすぐ行けば函館駅にぶつかる。その南の南部坂にはロープウエイの山麓駅がある。

逆の北側には大三坂、八幡坂、日和坂、基坂とそれぞれが平行して街中に下る。わたしは八幡坂の中央に立って港を俯瞰したが、眼下の正面に元青函連絡船で使用された「摩周丸」の雄姿が見下ろせた。函館湾は朝の光を受けて眩しかった。
<先人の残したもの>
元町公園の一角に「函館四天王」の銅像が建っている。函館戦争が終結し、新しい函館の街づくりに私財を投じて活躍した英雄たちである。

明治初期の函館は、室町時代の自由都市・境に近い自治国家の風潮があった。明治政府に依存できないから、なにごとも自分たちでやらざるを得なかった。
そんな理由はあったろうが、リーダーたちには気骨があり統率力も優れていたのだろう。
港に向かって函館の将来について話し合っているがごときの4人とは・・・・・道内最初の新聞社・北溟社(ほくめいしゃ?)を創立した丸井市右衛門、函館生まれの呉服太物商で産業振興のリーダー平田文右衛門、明治
2年金森洋物店を開き海運・商船にも偉業を残した渡邉熊四郎、公共事業に尽力し私財を投じて慈善事業に貢献した平塚時蔵がその四天王である。
天国から函館の町を見下ろしながら、現代の町の隆盛を喜んでいるのだろうか?あるいは「まだまだやりたいことは山ほどあるネエ!」と現代の函館人に何かを問いかけているような気もする。
さて、もう一人忘れてならないのは高田屋嘉兵衛のこと。
このかたは司馬遼太郎氏が「菜の花の沖」で取り上げ、その活躍を余すことなく書かれている。
<高田屋嘉兵衛>
明和6年(1769)淡路島に生まれ、28歳のとき函館にわたる。
文政元年(1818)故郷に帰るまで、函館を基地として造船・海運・漁場経営などを手がけ函館発展の基礎を作った。
さらに、ゴロヴニン号事件という日露国家間の問題を民間人として解決に導いたことは有名。自らロシアにも出向いたり、捕虜になったり、苦労の中で信頼を勝ち取り、誠実な民間外交を展開した。
函館四天王も嘉兵衛から受けた影響は大きかったにちがいない。
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かようにどの土地でも、先人の努力の積み重ねがあって今の繁栄がある。とくに北海道は中央から離れ、独立不羈の精神を持たないと歴史から消えてしまいそうな危うさを持っていたから、先人の努力は並大抵ではなかったはずである。感謝そして合掌。
<歴史を彩る建物群・・・写真>

<↑ 威風堂々 ビザンチン様式のハリスト正教会 夜と昼>

<↑ ゴシックの尖塔が秋の空に映えるカトリック元町教会 夜と昼>

<↑ 左 聖ヨハネ教会ライトアップ 右 青と黄色が目立つ旧函館区公会堂>

<↑ 左 エンタシスと破風の写真歴史館 右 レトロな市電>

<↑ 左 大正2年築、プロテスタント系でピンク色をした清楚な「遺愛幼稚園」。「お吟さま」で直木賞を受賞した、今はなき今東光さんが通ったというが、彼が通ったのは明治の末期だからこの建物もなかった。 右 元町公園と函館湾>
<続く>
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